7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「……おはようございます」

「具合はもういいのか?」

「はい。おかげさまでよくなりました。ありがとうございます」

「そうか、よかった」

ホッとしたように表情を緩めた永斗さんに胸がギュッと締め付けられる。

どうしてそんなに優しい顔をするの……?

昨日の秘書の人と永斗さんの言葉が蘇ってくる。

こうやって声をかけてくれるのも心配してくれるのも今の私が永斗さんにとって利用価値があるからに他ならない。

「沙羅、朝食にしよう」

「すみません、今日は食欲がないので……」

「そうなのか?食べられそうな物はあるか?少しでも食べて栄養を取った方がいい」

「いえ……」

「遠慮せずに言ってみろ。すぐに取り寄せよう」

「――いりません!!」

感情が高ぶり思わず叫んだ。

そんな私を永斗さんとマリアは驚いたように見つめた。

「ご、ごめんなさい……!」

慌てて謝り二人に背中を向けると、螺旋階段を駆け上がっていく。

私ってばどうかしている。

永斗さんと私は最初から契約の上で成り立っている関係だったのに。

それなのに勝手にヤキモキしてバカみたいだ。

感情を抑えきれなかった自分を必死に心の中で罵ることしかできない。
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