7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「沙羅、入るぞ」

コンコンッと部屋の扉をノックされ黙っていると、永斗さんが部屋に入ってきた。

背中を向けている私の前まで歩み寄ると、永斗さんは私の顔を覗き込む。

「どうした。何かあったのか?それとも、まだ体調が思わしくないか?」

「……違います。ただ少し余裕がなくて……。ごめんなさい」

「沙羅」

永斗さんはそっと私の腰に腕を回し、ベッドへ座らせた。

その隣に腰かけると、優しく語りかける。

「俺には何でも言ってくれ。俺ができる事ならなんでもしよう」

私は唇を噛んで小さく首を横に振った。

「言わないと分からない。何があったんだ」

「本当になにもありませんから」

ほんの数センチ動けば互いの肩が触れ合う距離に私と永斗さんがいる。

これは相当重症な症状だ。

こんなことだけで私の体は熱を帯び、心臓の鼓動が高まるんだから。

「どうして目を逸らすんだ。俺をみろ」

顎を掴まれ強制的に永斗さんのほうへ顔を向けられる。

「沙羅、お前の考えていることが分からない」

それでも頑なに目を逸らす私に永斗さんは苛立ったように言う。

「――分かってもらわなくていいです」

そう答えると、永斗さんは私の顎から手を離した。

困惑し、信じられないとでもいう様に目を見開いた永斗さん。

「なんだと?最初に互いのことを知ろうと言ったのはお前だろう。なぜ気が変わったんだ……!」

「よく考えればおかしいことですよね。ようやく永斗さんが言っていた言葉の意味を理解しました」

私は耐えきれずにベッドから立ち上がった。
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