7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「どうやら渋滞しているようだ」

レストランを出て迎えの車を呼んだものの、近くで事故があった影響でなかなか迎えはこなかった。

「寒くないか?」

「大丈夫です」

そう答えたのに、永斗さんは自分のコートを脱いで私の肩にかけてくれる。

気温は氷点下だろう。吐く息は白く、じっとしていられないほどの凍てつくような寒さだ。

「これじゃ永斗さんが風邪を引いてしまいます」

「俺なら平気だ。それに、自分が風邪を引くより沙羅が苦しんでいるのを見ている方が辛いからな」

「でも……」

「俺が勝手にやっていることだから気にするな。それに、沙羅を振り向かせるためなら俺はどんなことだってやる」

「どうして私なんですか……?」

私は永斗さんにすがるような視線を向けた。

「どうして私なんかにそんなことを言ってくれるんですか?」

「お前を愛しているからに決まっているだろう。こんな風に誰かを強く想ったのは初めてだ」

永斗さんは困ったように眉を寄せる。

「沙羅が欲しい。お前が俺のそばにいてくれるならもう他には何もいらない。それぐらい大切に想ってることを分かってほしい」

「永斗さん……」

「心の中を沙羅に見せられたらいいのにな。そうすればきっと俺の沙羅への想いが伝わるはずだ」

永斗さんの言葉のあと、前方からマウンテンバイクに乗った男性がこちらに向かってきた。

ここは歩道だ。自転車用の車道は別にあるというのに、どうして……?

「永斗さん、危な―ー」

「沙羅!!」

――危ない!!

そう叫ぼうとしたときには私は永斗さんに腕を引っ張られ、守られるように抱きしめられていた。

それはあっという間の出来事だった。

マウンテンバイクは永斗さんと激しくぶつかり、その拍子に永斗さんは転倒し頭を打ち付けた。

「――っ、沙羅、ケガはないか……?」

顔を歪めた永斗さんの側頭部から流れる血に気付いて全身が恐怖で震える。

「永斗さん……?永斗さん!?」

「……心配するな、大丈夫……だ」

そう言ったあと、永斗さんは私の呼びかけに応じなくなった。

全身から血の気が引いていく。両親の事故を思い出し体がブルブルと震える。

「だ、誰か――。誰か助けて!!!」

大声で叫ぶと近くにいた通行人が駆け寄ってきた。

「そこの自転車がぶつかってきたんです!!」

自転車の倒れていた方を指さすと、永斗さんにぶつかったマウンテンバイクも男性も忽然と姿を消していた。

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