あやかし戦記 妖艶な夜に悪夢を
ヴィンセントが犬を不審そうに見ながら訊ねると、「うん、このマンションは動物禁止だね」と犬が口を開く。突然犬が喋ったことにイヅナとレオナードは驚いて固まり、ヴィンセントも警戒をした。

「お久しぶりです、ウィリアムさん」

「ウィリアム、もう人の姿に戻ってあげて」

アレンが頭を下げ、チェルシーがお茶とケーキをテーブルの上に置きながら言うと、「それもそうだね」と犬は頷いて何やら呪文を唱える。刹那、光に犬が包まれ、光が消えた後にそこにいたのは一人の男性だった。

赤みがかったブラウンの長めの髪を一つに束ね、濃いブラウンの目を優しく細めている。白いシャツの上にベージュのベストを着て、ブラウンのパンツを履いている。

「紹介するわね、この人はウィリアム・ランカスター。私の恋人で魔法使いなの」

「ウィリアムさん、お久しぶりです。イヅナさんたちは魔法を見るのは初めてだっけ。そりゃあ驚くよね。俺も最初はそんな反応だったな〜」
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