あやかし戦記 妖艶な夜に悪夢を

夢の終わり

「んっ……」

イヅナが目を覚ますと、ジャラリと嫌な音が響く。覚醒したイヅナが見たのは、天井から吊るされた鎖によって両手を拘束されている自身の姿だった。

十畳ほどの部屋には窓や時計がなく、どれほど眠っていたのかはわからない。鉄格子のついたまるで牢屋のようなドアが一つあり、部屋の中にポツンと置かれた長いテーブルには、切れ味のよさそうなナイフやノコギリなどが並んでおり、イヅナの恐怖を掻き立てる。

「早く逃げないと！」

鎖を外そうともがくイヅナの耳に、うめき声が入り込む。隣を見れば、イヅナと同じ年頃の少女が数人、イヅナと同じように鎖で縛られていた。全員、ぐったりとしている。

「だ、大丈夫ですか？」

イヅナが声をかけたものの、返事はない。どうしようかと考えていると、ガチャリと鍵を開ける音が響き、手下らしき魔法使いを二人引き連れて豪華なドレスを着た美しい魔女が部屋の中に入ってくる。探していたレジーナ・ムーアだと一瞬でイヅナはわかった。