・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 リュウが隠さずに話してくれていたら、もっと早く知らされていたら。二人を間違え部屋の鍵を開けてしまうことも無かっただろうし、キスすることも無かったはずで。
 こんな後悔や苦しい思いなど、しなくて済んだのに。
 責任を全てリュウのせいにしようとしているのは分かっている。キスする前に気付けなかった自分にも、落ち度はあり腹が立つし。
 リュウの帰りを待ちわびていた、私の心の隙を突かれたことにも腹が立つ。

 言い訳と言われてしまえば、それまでだけれど。リュウが帰国したと思い込ませるためにリュウになりきり演じきっていた弟の裕隆さんだったから、冷静に見抜くことが出来なかった。


「近いうちにキチンと形にするから、今まで通り俺の傍に居て」

「それって、どういう意味? リュウが何を考えているのかなんてバカな私には分からないから、すぐに返事なんて出来ないよ。第一、全て聞いた今。私自身がどうしたいかも分からないのに」


 リュウも副社長もどちらも同じ人だと急に言われたって。私は両者と接していたにも拘らず、その姿も口調も違っていたから。
 二人が双子だと言われて全く疑わなかった私だ。余計に「はいそうですか」と納得して素直に受け入れるなんて器用なこと、出来そうにない。
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