・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「まだ帰ってなかったのかぁ」


 バッグをソファの脇に置き、ベッドルームを覗く。いつもなら脱ぎ散らかされたままのルームウェアが綺麗に畳まれベッドの上に行儀よく乗せられている。
 綺麗にメイキングも済んでいるベッドを見て、隆好が既に一度帰って来ていたことに気付いた。

 今夜は会食の席も予定されていないはずだ。もしかしたら裕隆さんと社長との話し合いの席に、隆好も呼び出されて同席しているのかもしれない。
 だとしたら、帰宅するのは何時になるか分からないな。

 いつも隆好が仕事をしている時に座っているデスクの椅子を引き、そっと座ってみる。
ギシッと革張り特有の音がして、ふと目に留まったデスク脇の引き出しに手をかけた。

 中には万年筆やらボールペン、消しゴムに定規等。文房具がギッシリと詰め込まれていてH&T㏇の副社長らしい引き出しに顔がほころぶ。
 二段目には「西田リュウ」として舞台に立った際の共演者との記念写真や、ファンレター等が納められていた。そして三段目には……。


「なに、これ」


 順番的に趣味の物が収められているだろうと思っていたから。中を見て心臓が止まるかと思った。
 航空券が入っているであろうチケット入れを目にしてしまった私は、思わずそれを手に取り。恐る恐る中に納まっていたチケットを引き出した。
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