・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 しかし、そんな願いが叶うわけもなく。副社長としての仕事に加え、西田リュウとしての俳優業のスケジュールを忙しそうにこなしていた隆好からは、当然のように連絡はなく。

 そんな状況にヤキモキしながらも、自分から連絡を取る勇気が無かった私は。ただ、隆好のことを気にしながらも行動に移せず、業務を淡々とこなし毎日が過ぎていき。

 隆好とは一度も顔を合わせる事が無いまま、西田リュウのショートムービー上映会当日を迎えてしまった。

 リュウのマネージャーさんから招待されたのは舞台挨拶のある初日。隆好と会えていなかった時間が今までで一番長かった分、どこか緊張している自分が居る。

 スタンドミラーの前に立ち、全身を映す。
 ヘアセットした髪、ナチュラルメイク。招待客から浮かないように、地味目な色味の洋服を選んだというのに。
 私的には念入りにめかし込んでいるのが分かるから、なんだか可笑しい。


 果たしてリュウは舞台上から私を見つけてくれるだろうか。私が来ていることに気付いてくれるだろうか。


 余計な心配だと分かっていながらもコートを羽織り、パンプスに足を突っ込む。
 やはり心ここにあらず、とでもいうべきか。お決まりのように、パンプスを履いた片足のバランスを崩しその場に尻餅をついた。
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