・LOVER—いつもあなたの腕の中—


ノッポなビルに囲まれた、煌びやかなネオン街。
日本の都会とはまた違った雰囲気に、足が竦む。

やっとの思いでタクシーを拾い、メモ書きした住所をドライバーに手渡す。
走り出したタクシーが、本当に目的の場所へ向かっているのかさえ分からなくて、早速不安になる。


どうしよう。
空港まで現地の社員に迎えを頼むべきだったかな。
でも、しょっぱなから手の掛かる女だと思われたくなくて、自力で職場へ行くと宣言してしまったし。


オフィス街の一角でタクシーが停まり「目の前が君のメモしていたオフィスだよ」とドライバーに教えられた先に、目を向けて驚いてしまう。

蔦の絡まる外壁に、一体何年物の建物なの? と聞いてしまいそうな程に、年季の入ったアンティークな外観をしたビルが、私を迎えた。


ドアノブを回し、中へ入る。
一階は気軽に入れる店舗となっていて。
店内の和風な雰囲気の中で、日本語で記された親しみのある文房具たちが所狭しと並んでいた。
二階に上がると、そこはH&T㏇のギャラリーとなっており。
懐かしの文房具や、歴代の万年筆などが展示されていた。


「わぁ、ビル内は日本にいる時と変わらないかも。イイ雰囲気」

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