・LOVER—いつもあなたの腕の中—
独り言を呟きながら、案内された社長室の前へとやってきた。
H&T㏇から独立した、新会社への勤務を命じられた私は、社内でも大抜擢だとか人選ミスだとか、いろいろ言われたけれど。
そんなことは、私にとって何も問題ではなかった。
私としては、新天地で頑張るチャンスだと前向きにとらえ。
尚且つ、新会社の社長直々に指名を受けたのだから、ポンコツな私の働きが、どの程度のものかを知っていての人選なのだろうから。
「人選ミスだろうが何だろうが、後で後悔するのは新会社の社長本人だ!」と開き直っていたからだ。
まさか私が日本を離れ、文房具の仕事をすることになるなんて、考えてもいなかった。
隆好とは別々の道を選んだけれど。
いつも、どこかで思っていた。
もしも、あの時。
違う選択をしていたら。
自分の気持ちに、素直になっていたら。
繋いでいた手を離さずに、隆好を追っていたら。
いったい、どんな今だったのかな。
どんな未来を迎えることが出来たのかな、と。
もう二度と、隆好には会えないのに。
そんなことばかり考えてしまう私は、まだ隆好を……。
「社長、真島優羽さんが到着されました」