・LOVER—いつもあなたの腕の中—
社長室のドアに向かい、案内してくれた女性社員が声をかけると。
室内から「どうぞ」と返事が返ってきた。
閉じられていたドアが、ゆっくりと開き。
入室するように促された私は、恐る恐る足を踏み入れた。
「初めまして、H&T㏇から参りました。真島優羽です。これから、お世話になります。宜しくお願い致します」
深々と頭を下げ、一礼すると。
大理石の床に見えていた私のパンプスのつま先に、男性ものの靴先がコツンと当たった。
「気心知れた相手と一緒の方が、仕事もやり易いからな」
「え?」
ずっと前に、聞いたことがある同じような台詞を耳にした私は、無条件に反応してしまい。
思わず顔を上げ、目の前の社長に視線を向けた。
日に焼けているのか、色が少し抜けている髪色は少しパサついているように見える。
なめらかな素肌に似合う、真っ白なシャツが眩しくて。
笑うと、垂れ目になり。
微笑んだ唇は、柔らかく口角が上がっている。
「優羽」
包み込むように、澄んだ綺麗な声で私を呼ぶから。
記憶を手繰り寄せるように声に導かれ、引き寄せられて。
自然と、手が伸びてしまう。
目の前に立っている、その顔を両手で包み込み。
夢か幻かと、思わずにはいられなくて。
しつこいくらいに、本物かどうか確かめてしまう。