・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「じゃなくてさ、何か進展なかったの? って聞いてるのよ」

「あるわけないでしょ。向こうは仕事で来社してたんだし」


 第一、副社長の前で「知り合いです」なんて言える程親しい間柄でもないのだから。


「なんだ、つまんなーい。せっかく芸能人と知り合いになれたのに、なんにも無し? どうせなら芸能人仲間と飲み会でも開く計画立てるとかさぁ、私達にも美味しい思いさせてよ」

「ばーか。そんなこと出来るわけないでしょ」


 結局、芽衣には全部話せなかった。というより、意図的に話さなかったのはわたしの意思だ。
 抱きしめられたことは、私だけの秘密にしておきたいと思ったから。


 上司が慌てていた緊急会議は、会議室で行われ。その場に徴集された顔ぶれを見て、驚いた。
 営業部は直属の上司である、深山さんと私が国内営業担当から。国外営業担当からは、男性主任と芽衣が呼ばれていた。
 その他に、品質管理部と商品開発部からのメンバー等々数名。この辺までは、いつもと変わらぬ顔ぶれだったのだが。
 先程わたしを呼び出した副社長が居たのだ。

 資料に視線を落とし顔色一つ変えずに居る姿は、少し前に副社長室で会った時と同じ。パリッとスーツを着こなし、髪一本乱れていないオールバックヘアに細縁眼鏡姿。
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