甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
そして、約束の土曜日のお昼。
今後、結婚のことは、私の承諾が無い限り、木島さんに話をしない。
それを条件として、食事に同席することにした。
木島さんは、結婚したら真っ直ぐに家に帰って来て、家の事も手伝ってくれて、きっと、幸せな家庭というものが築けると想う。
ただ…
こればかりは、私の本能が、恋愛対象として受け入れないのだ。
私は、まともに男の人と、付き合った事が無い。
友達が、私の前では見せない微笑みで、彼氏と話している姿を見たり、惚気話を聞かされると、早く私も、そんな人と出逢いたいと思って、楽しみにしていた。
それなのに、いきなり結婚で、相手が愛する人じゃなく、お父さんに決められた人…
それを1人娘の私に受け入れろなんて、自分の運命すら恨みたくなった。

「木島くん、休みの日にすまないね」
「いえ、こちらこそ、こんな素敵なホテルのお食事にお誘いいただくなんて。佐々倉さん、普段は髪をまとめてるから、イメージが違ってびっくりしたよ」
「え、えぇ、まぁ…」
お父さんに、名目は仕事でも、今日は女性らしい服装で来るように言われてた。
「木島くん、仕事での結羽はどうかね?」
「まだ2年とは思えないくらいですよ。皆に頼りにされていますし」
「まぁ、これからも末長く頼むよ」
「もう、私の話は止めてよ」
私が睨みつけると、お父さんは、にやけた顔で、木島さんと2人で、今度の西条HDの話をし始めた。
ほんとにもぉっ!
それにしても、このホテル素敵だ。
んっ!これ美味しい!
どれも今まで食べたことないくらい美味しい。
ここでランチ出来たことは、今日来て良かった。
私は、殆ど2人の話を聞かずに、食事を堪能していた。
そろそろ食事も終わりかけた頃、
「社長、西条HDのご子息の西条専務が、月曜日の朝にお見えになるそうですね」
「あぁ、木島くんも同席頼むよ」
「分かりました」
「じゃあ、そろろそ私は帰るけど、2人でゆっくりしていけばどうだ?」
何勝手なこと言ってるのよ!
「せっかくの嬉しいお言葉ですが、私、今から外せない用がありまして。これで失礼します。佐々倉さん、また月曜日に」
「は、はい、失礼します」
私は木島さんを見送って、ほっとしてため息をついた。
「結羽、家まで送るよ」
「いいわ、私、1人で帰るから。先に帰って」
お父さんと会話する気にもなれず、1人椅子に腰掛けて、コーヒーを注文した。
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