僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 自分がどれだけ理人(りひと)のことを大好きで、彼を独占したいって思っているのか思い知らされた気がして、私は自分が怖くなる。

 一緒にいるときは理人からの愛情が大きすぎて見過ごしがちだった気持ち。

 私、こんなに理人のことが好きで好きで堪らないんだ。

 繋いだ手を思わずギュッと強く握ってしまって、それに気づいた理人がそっと肩を抱いて自分の方へ引き寄せてくれた。

 きっと傍目に見たら、あのカップル、こんな公衆の面前でイチャイチャして、とか思われちゃうんだろうな。
 こんなこと、本当は人前ですることじゃないと頭では分かっているんだけれど……。出会いと別れが付き物の駅の構内や空港のロビーでなら……そういうのも大目に見てもらえるんじゃないかな、とかそんなことを思ってしまって。

「理人……お願い。ギュッと抱きしめて……」

 小さくつぶやくようにそうおねだりをして、私は窺うように隣に座る理人を見遣った。
 理人は一瞬驚いたように瞳を見開いてから、肩に回した手をグッと引き寄せて私を腕の中に包み込んでくれる。

 大好きな理人の匂いを胸一杯吸い込みながら、三泊四日、頑張ろうって思った。
< 10 / 332 >

この作品をシェア

pagetop