僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

「ききちゃーん、こっちなのですっ!」

 ひおちゃんの住む町にある【I・K空港】に着いて、手荷物を受け取ってから到着ゲートを出ると、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら手を振る女性の姿が見えた。

 色素の薄いロングストレートを、綺麗な姫カットに揃えたサラサラの髪。同じく色素の薄めな、ともするとブラウンにも見える瞳のはまった二重まぶたの大きな目、私と同じぐらいの小さめの身長。

 彼女は、赤に白い小花柄のミディアム丈の半そでワンピースを着て、ぺたんこのヒールなしソールのフリルつきサンダルを履いていた。

 ヒールがないからぴょんぴょん跳ねても平気なのかしら。

 そう思って見たら、はしゃぎながら手を振る彼女の横に、彼女が転ばないか心配そうな顔をして寄り添う、長身男性が目に入った。

(あ、あれがひおちゃんの……)

 ひおちゃんと実際に会うのは、私が引っ越した5歳の頃以来だけど、定期的に写真などを送り合ってお互いの外見は知っている。

 もしそれがなかったとしても、あの、お人形さんみたいな可愛らしい外見と喋り方ですぐに分かる。間違いようがない。
 あれが――
「ひおちゃん!」
 だ。

 二人きりならギュッと抱きしめあうところなんだけど、何となくひおちゃんの彼氏さん――いや、ご主人になるのかな?――の存在が気になって、私はソワソワと落ち着かない。

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