僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
飲み会
「真咲ぃ〜。寂しい僕を慰めてぇー!」
葵咲ちゃんが旅立った日。
僕は一人の部屋に帰るのが嫌で、空港から直接友人の営む和菓子屋へ出向いた。
真咲がいたら愚痴ろう。
いなかったら帰ろう。
そう思って出掛けたんだけど、神様は哀れな僕の味方だったらしい。
先日同様、店にはちゃんと真咲の姿があって、僕は心底ホッとする。
「池本? ……いや、俺まだ仕事中だし」
つれない友人に、僕はそれでも食い下がる。
「んー。じゃあどこかで時間潰して待つ。仕事、何時まで?」
とにかく僕はあの家に1人でいたくない。
大学卒業からずっと音信不通だったくせに、近くに気心の知れた友人がいるとたまたま知った途端、僕はその人に頼りたくなってしまう。
普段なら葵咲ちゃんのことで手一杯で、他の人たちのことなんて、頭の端っこにも登ってこないくせに、僕も大概ご都合主義だ。
「全く……用があるなら先に連絡くらいしなよ。俺の状況、知らないわけじゃないだろ」
溜め息混じりに告げられた言葉があまりにもごもっともで、僕は一瞬言葉に詰まった。
真咲、妻帯者だもんね。
僕だって、葵咲ちゃんが家にいる時は飲みに行きたくないっ!
というか仕事が終わったらすぐにでも帰りたい。
帰って彼女をギュッと抱きしめたい。
彼女を放って、夜に出歩くとか、マジで有り得ない!
「奥さんと離れるの嫌だよね。そりゃそうだー。僕だって葵咲ちゃんが家にいたら、絶対飲みになんて出たくないし」
しゅんとしてつぶやいたら、盛大な溜め息をつかれた。
「そんな遅くまでは無理だからな?」
そう言って、19時には行けると思う、と近場の居酒屋を指定してくれた真咲は天使なんじゃないかと、僕は本気で思った。
葵咲ちゃんと名前が似てるだけのことはある。
葵咲ちゃんが旅立った日。
僕は一人の部屋に帰るのが嫌で、空港から直接友人の営む和菓子屋へ出向いた。
真咲がいたら愚痴ろう。
いなかったら帰ろう。
そう思って出掛けたんだけど、神様は哀れな僕の味方だったらしい。
先日同様、店にはちゃんと真咲の姿があって、僕は心底ホッとする。
「池本? ……いや、俺まだ仕事中だし」
つれない友人に、僕はそれでも食い下がる。
「んー。じゃあどこかで時間潰して待つ。仕事、何時まで?」
とにかく僕はあの家に1人でいたくない。
大学卒業からずっと音信不通だったくせに、近くに気心の知れた友人がいるとたまたま知った途端、僕はその人に頼りたくなってしまう。
普段なら葵咲ちゃんのことで手一杯で、他の人たちのことなんて、頭の端っこにも登ってこないくせに、僕も大概ご都合主義だ。
「全く……用があるなら先に連絡くらいしなよ。俺の状況、知らないわけじゃないだろ」
溜め息混じりに告げられた言葉があまりにもごもっともで、僕は一瞬言葉に詰まった。
真咲、妻帯者だもんね。
僕だって、葵咲ちゃんが家にいる時は飲みに行きたくないっ!
というか仕事が終わったらすぐにでも帰りたい。
帰って彼女をギュッと抱きしめたい。
彼女を放って、夜に出歩くとか、マジで有り得ない!
「奥さんと離れるの嫌だよね。そりゃそうだー。僕だって葵咲ちゃんが家にいたら、絶対飲みになんて出たくないし」
しゅんとしてつぶやいたら、盛大な溜め息をつかれた。
「そんな遅くまでは無理だからな?」
そう言って、19時には行けると思う、と近場の居酒屋を指定してくれた真咲は天使なんじゃないかと、僕は本気で思った。
葵咲ちゃんと名前が似てるだけのことはある。