僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「やん、理人(りひと)っ、ここ、……玄関っ」

 ギュッと僕にしがみつく葵咲(きさき)ちゃんの耳元に
「そうだね。けど、あちこちベタベタだし……お風呂行こうか?」
 そう囁けば、「理人のえっち……」とか。

 ねぇ、葵咲ちゃん。それは褒め言葉?


「葵咲()()()を前にして抱きたくならないとか有り得ないだろ?」

 当然、とばかりにそう言って、葵咲ちゃんを抱き上げてリビングを突っ切れば、キッチンはまだ少しチョコを残していて。
 けど概ね綺麗なところを見ると、ほぼほぼ彼女が被ってしまったんだろう。


 セレは別にチョコに興味はないみたいで、僕と葵咲ちゃんを見つけるなり「にゃにゃーん」と走り寄ってきた。

 僕はそんなセレに、葵咲ちゃんには見えないように「グッジョブ!」とウィンクをした。

 セレは「?」と言った顔で僕の仕草にキョトンと小首を傾げたけれど、「あとでね」と言葉を残してお風呂へ直行する。
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