僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 温泉旅行の時、少し気持ちが(たかぶ)って、日頃はしないような攻め方を理人(りひと)にして、手痛いしっぺ返しがあったのを思い出す。
 そのときにしたって、彼の裸を見てやろうと言う気概はなかったような……。

 っていうか……そんなの照れるでしょ!

「な、流れ次第……なのですね。修太郎(しゅうたろう)さんが一緒にお風呂に入りたいとおっしゃるのですけれど……私、お受けしても……その……だ、大丈夫、でしょうか」

 もじもじ。

 そんな擬音と、ポッという照れた音が聞こえてきそうなひおちゃんの様子に、私はキュンとしてしまう。
 ひおちゃんの背中に、キラキラとした点描の円がたくさん見える気がする。

「大丈夫よ、きっと! 塚田さん、ひおちゃんよりかなり年上だよね? きっと場数も踏んでいらっしゃるし、そういうのは心得ていらっしゃるんじゃないかな? ひおちゃんは彼に身を委ねていれば解決だよ! ――ね?」

 ニコッと笑って言ったら、途端、ひおちゃんに泣きそうな顔でこちらを見つめられて驚いてしまう。

「ひおちゃん?」

 びっくりして呼びかけたら「修太郎さんは……私とが何もかも初めてだと……思うの、ですっ。だから……彼だけに負担をおかけするわけには、いかないのですっ」って言われて。

 ん?
 どういう、意味?
 ひおちゃんとが何もかも……初めて?
 え? え? え?

「あの……ひおちゃん、塚田さんって……」

「しゅ、修太郎さん、とっても一途な方なので……私以外の女性とは……、は、反応なさらなかったとかで……実はエッチも……その……は、初めて同士だったのです……」

 うつむいて告げられたひおちゃんのセリフに、私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

 同時に、「一途」という、ひおちゃんのその言葉が、胸の中に刺のようにチクリと刺さってシクシクと痛み出してしまった。

 理人は……私とのアレ、初めてには見えなかった。

 私の大好きな理人は……一途じゃ……なかった?
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