僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「――ちゃん、……きちゃん、ききちゃんっ?」

 ひおちゃんがこちらに身を乗り出してきて、私の前で手をひらひらしているのに気が付いて、ハッとする。

 いけないっ。私……ぼんやりしてた。

 というより……ひおちゃんの言葉にすっかり動揺してしまったと言うべきかな。

「あ、ご、ごめっ、ひおちゃん。ちょっと考え事しちゃってた」

 言ったら、ひおちゃんがきょとんとした顔で私を見つめ返してくる。

「考え事をして、心ここにあらずになっちゃうなんて……まるで私みたいなのです。――大丈夫ですか?」

 自分みたいだと言っておいて「大丈夫ですか?」と問いかけて、心底心配そうな顔をするひおちゃんに、私はちょっぴり和まされた。

「大丈夫だよ。あの……ホント、心配掛けてごめんね。――ちょっとね……ひおちゃんのお話聞いてたら、理人(りひと)に確認してみたいことが出来ただけなの」

 そう言ったらひおちゃんが「確認?」と繰り返してきて。

 私は言うべきか言わざるべきかほんの少し迷ってから、ひおちゃんは私に自分の気持ちを包み隠さず話してくれてるんだもん。私だけそうしないのはフェアじゃないよね、と思いいたる。

 私は手にしていたグラスをテーブルに置いて、ひおちゃんを真正面からじっと見つめた。

「あのね、ひおちゃん。私、理人とは彼が小学6年生、私が1年生のときからの付き合いなの」

 居住まいを正して話し始めた私に、ひおちゃんもグラスを置いて正座になる。

「理人は初めて出会った瞬間から、私に恋をしたってよく言ってくれるのね」

 そこまで言って、まるで惚気(のろけ)話みたい?と思ってちょっと恥ずかしくなった。
< 44 / 332 >

この作品をシェア

pagetop