僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***


「真咲、僕、日本酒(これ)飲んだら帰るよ」

 昨夜、葵咲ちゃんとの電話を終えた僕は、戻るなりソワソワしながら真咲にそう言って、彼を驚かせた。

 席には離席前に頼んでおいた酒が既に運ばれてきていて。

 相変わらずビールを煽っている真崎に、僕は思わず「あれ? またビール?」と聞いてしまった。
「うん。今日はそんな気分だから。っていうか、池本って強かったっけ? 混ぜて(ちゃんぽんして)大丈夫?」
 って、まるで葵咲ちゃんみたいなこと言うんだね。

 グラスになみなみ注がれた日本酒――獺祭(だっさい)をすすりながら、混ぜてごめんなさい、と心の中で葵咲(きさき)ちゃんに謝る。

 グラス下に置かれた(ます)の中にも結構お酒が溢れていて、あー、日本酒はこうでなくっちゃ!とか思ってしまう程度には、僕は日本酒が好きだ。

 獺祭(このお酒)、吟醸香が凄くさわやかで、口当たりが軽い。きっと葵咲ちゃんでも飲めるやつだ。あっちへ行ったら買って帰ろうかな。

 そんなことを思う。
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