僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「えっと――それで」

 ――この状況は、どういうことだろうね?

 僕はそんな思いを込めて葵咲(きさき)ちゃんをじっと見つめる。と、ふいっと視線をかわされてしまった。
 何だよ、この如何にも何かありますって雰囲気。

「葵咲?」
 僕が再度葵咲ちゃんに呼びかけたら、代わりにかぐや姫が動いた。

「あ、あのっ、池本さん。――す、すごく勝手なお願いなんですがっ、()()()()一緒にご飯を食べに行けたら嬉しいなって……私がききちゃんに頼み込んだのですっ」

 葵咲ちゃんがメッセしてきた「()()()()()」がここで繋がって、「ああ、今回は爆弾のほうだったか」と思い至った僕は、はからずも苦笑いだ。

 真っ赤な顔をして……それでも僕から視線を外さないかぐや姫を見て、僕は内心「へぇ〜」と感心する。
 何だ、この子。子供っぽくて何も言えないお嬢様タイプかと思ったら……なかなかどうして。芯があるじゃないか。
 僕はこういうタイプの子が嫌いじゃない。
 もちろん異性としてってことではなく、人としてって意味だけど。

「えっと……()日織(ひおり)さん、でしたっけ?」

 塚田さん、と呼ぼうとして、眼前の男も塚田だったと思い出した僕は、とりあえず下の名前で呼びかけてみた。

 んー、けどこの呼び方はマズイかもなぁ。

 呼んだ直後にそう思ったら、案の定というべきか。今まで黙っていた彼女の従者――もといご主人が即座に口を開いて。

「あの、池本さん。勝手なお願いなんですが、彼女のことは塚田、でお願いします。僕との差異が必要でしたら僕の方を名前で呼んでいただけたらと思います」

 って、やっぱりそうくるよね。うん、分かってた。
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