僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 薄暗くて人気のない駐車場の車内。――まぁ、僕の身体は車の外だけど。

 そんなに目立たないし、キスぐらい、いいよね。
 もちろんするからにはディープなやつを。

「ね、葵咲(きさき)。キスしたいな?」

 こういう時、葵咲ちゃんにはストレートにお願いしたほうが効果的だ。
 変に婉曲した物言いをするより、直情的に訴えた方が心に響く。

「……でも、ここ、駐車場……」
 言って瞳を伏せる彼女を、僕は無言で見つめた。

 あごは捉えてあるんだ。

 もう一押し。

 葵咲ちゃんの唇スレスレに顔を寄せると、「ダメ?」と聞く。
 葵咲ちゃんは一瞬瞳を見開いてから、観念したように静かに目を閉じてくれた。

 僕はそんな葵咲ちゃんの柔らかい唇に、軽くついばむように口付ける。
 本当は一気に(むさぼ)りたいぐらいだけど、ここは冷静に。

 優しく何度も何度も角度を変えながら、軽く(かす)めるだけのキスを繰り返したら、葵咲ちゃんが堪らないみたいに小さく吐息を漏らした。

 それを合図に、僕はキスの角度を深くする。

 そっと窺うように舌を挿し入れると、葵咲ちゃんがおずおずとそれに応えてくれて。

 あー、ホント、キミはなんて色っぽいんだ!

 恥ずかしがっているように見えて、ほんの少しきっかけを作れば、すぐに僕の求めに精一杯応じて積極的になってくれる。

 そのくせ常に恥じらいは捨てきれないんだ。

 僕は葵咲ちゃんのそんなギリギリの危うさが大好きだ。

 キスを交わしているうちに、僕はここが駐車場だということも忘れて、もっともっと……彼女を深く求めたくなって欲張ってしまう。
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