僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***


 結局その彼女から、僕はたくさんのことを教えてもらったんだ。

 最初に僕がお願いした通り、彼女は枕に顔を押し当てるようにして声をほとんど出さなかったし、僕も彼女の顔を見ながら抱くことは一切しなかった。

 それでも女性の身体のこと、どこをどうすれば反応してくれるのか、なんかは彼女との経験なくしては僕には知るよしもなかったことばかりだった。


 葵咲(きさき)ちゃんとの初めてがスムーズにいったのは、その初体験があったからだと断言できる。


 でも、それはあくまでも僕の勝手な言い分なんだよね。

 もしも逆の立場だったなら……ぎこちなくてもいいからそういうことをしないでいて欲しかったと思うのが普通なのかもしれない。


 僕はあの時、どうしてそういう風に思えなかったんだろう。


 やっぱり僕が見栄っ張りだったから、だろうな。

 葵咲ちゃんの前で恥をかけないと思ってしまうような、ちっぽけな男。

 葵咲ちゃんが僕の自尊心のせいで傷ついてしまったんだとしたら、どう取り繕ったって僕が全面的に悪い。

 どうやったら、僕は葵咲ちゃんに許してもらえるだろうか。
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