名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「で、今日の要件は?」
と、私は将嗣に事務的に接する。
「今度の水曜日午後2時に弁護士さんの手配が付いたんだ。迎えにくるよ」
「えっ? それだけ? ラインのトークでも済んだのに……」
「夏希ちゃん、園原さんだって美優ちゃんに会いたかったんだよ。用事がないと会いにくいし、そんな事言わないの」
紗月に窘められた。言われてみればそうなのかもしれない。
「紗月さん、ありがとう。美優ちゃんの顔が見たかったんだ」
少し寂しそうに言う将嗣の言葉を聞いて、罪悪感が湧く。
少なくとも将嗣は、美優の父親としての対応は、誠意を持って対応してくれている。
私は冷たすぎるのだろうか?
そんな事考えていたら心に隙をついたように将嗣が例の話をし出した。
「夏希、田舎の両親に美優ちゃんを会わせる話考えてくれた?」
ヤバイ、保留中の話を持ち出された。
「何? 夏希ちゃん、園原さんのご両親に会うの?」
認知の話も約束通り進めてくれている訳で、セットでこの話も出るのは予想していたが、今日突然、将嗣がやってくるとは思ず、まだ答えが出ていなかった。
「……ごめん、まだ考え中」
やんわり断れないか言葉を探していたが言葉が見つからずにいた。