名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「翔也さんが来てくれて、顔が見れて安心しました。遠いところを駆けつけてくれてとても嬉しいです」
「私も夏希さんの声を聞く事が出来て、顔を見る事が出来てとても嬉しい。生きていてくれて良かった」
朝倉先生が重ねた手に力が籠った。
「夏希さん……」
朝倉先生が、何かを言い掛けた時、コンコンとノック音が聞こえた。
重なる手が離れて、朝倉先生がため息をつく。
私は、「はい」とノックをしたドアの向こうの人に返事をする。
ドアが開くと美優を抱いた将嗣が入って来た。
病室に朝倉先生がいる事に驚いた様子だった将嗣は、一瞬ドアの横で立ち止まった。でも、直ぐに気を取り直して「ただいま」とベッドの脇に足を進めた。
朝倉先生の前に立ち、少し緊張した面持ちで美優を抱いたまま軽い会釈をして口を開く。
「こんにちは、遠い所までお越し頂いて……お疲れ様です」
「その節は、失礼しました。朝倉です。今回、事故に遭われて大変でしたね。園原さんや美優ちゃんが元気そうで良かった」
「おかげさまで、夏希には大変な思いをさせてしまいましたが美優が無事だったのが何よりです。事故の責任を取って二人をサポートしていきますのでご心配なく」