名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 二人のやり取りを息を詰めて見ていて、メチャクチャ緊張して、息苦しくなって、深呼吸をしたら何かヘンに吸い込んでしまったらしく咳き込んでしまった。
 ゴホッ、ゴホッ、
「痛っ!」
 咳が出た時、体のアチコチが痛み声をあげた。
「夏希さん」「夏希、大丈夫か?」
 二人同時に声を掛けられ、自分に意識が向くと何とも居心地の悪い事この上ない。でも、ベッドで動けないまま「大丈夫」と痛みで涙目になりながら返事をした。

イタタマレナイー、タスケテー!!(心のさけび!)

「あの、将嗣、紗月を送ってくれてありがとう」
 重苦しい空気を断ち切りたくて、明るい声を出した。
 
「いや、せっかく来てくれたのに全然楽しんでもらえなくて紗月さんには悪いことしちゃったよ。また、招待するから遊びに来て欲しいってお願いしておいた」
 
 私は、心の中で ” えっ?また!? ”っと思ったけれど、将嗣のお父さんお母さんの事を思えば、美優の顔を見せに来るのも仕方がないんだろう。ココは、右から左へと聞き流しておこう。

「あの、出来れば地元の病院に移れるか、病院の先生に聞いてくれる? 将嗣だって、いつまでも休んでいられないでしょう?」

「わかった、聞いてくるよ」

「あ、美優を朝倉先生に見てもらった方が病院の先生と話がし易いんじゃない?」

 将嗣は、少しムッとした表情になったが、直ぐにいつもの笑顔に戻り、美優に向かって
「大丈夫だよなぁ。美優ちゃんはパパとお利口さん出来るよなぁ」
 と話しかけながら、病室から出て行ってしまった。
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