名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
入院3日目の朝、面会時間が始まって直ぐに朝倉先生が来てくれた。
「おはよう」とイケボが聞こえ、手に持っていた紙袋からフラワーのアレンジメントを取り出した。
「わー!かわいい!」
そのアレンジメントは、ピンクや黄色の色鮮やかなバラがあしらわれて、真っ白で無機質な病室が明るくなった。
「プリザーブドフラワーだから、手入れもいらないって、お花屋さんにススメられたんだ」
「嬉しい。ありがとう。おかげで病室が明るくなりました」
私が笑顔で答えると、朝倉先生は、顔を曇らせ言葉を紡いだ。
「実は、急に仕事が入って、今日、帰らないといけなくなってしまった」
少し寂しく思ったけれど、仕事も忙しいハズなのに遠くまで心配して駆け付けて来てくれただけでも感謝したいし、病院の転院後の美優の子守まで引き受けてくれている。これ以上の我儘は言えない。
「寂しいですが、仕方ないですね。大人しく治療に専念します」
「私も寂しいよ」
朝倉先生の手が私の左手に重なった。