名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 スマホの中の電話帳を開き、その名前をタップする。呼び出し音が鳴ると2コールで相手が出た。

「どうしたの?」
 相手の都合も考える余裕など無かった。

 泣きながら声を振り絞る。
「翔也さん、助けて! 美優が取られちゃう!」
 それだけ言うと涙がブワッとあふれ出し嗚咽に変わった。

「直ぐに行くから、夏希さん、落ち着いて」

「うん、ごめん……なさい」
 
 通話を切るとスマホを握りしめたまま、泣き続けていた。

 ” 美優をないがしろにして ” なんて、ひどい。
 美優が、お腹にいる事がわかった時は、将嗣と別れた後だったし、将嗣は既婚者だったから連絡も出来なくて……。
 凄く悩んで、それでも産みたくて、シングルマザーの道を選んだ。
 大きくなるお腹を愛おしく擦りながら日々すごしたのに……。
 産まれてからも夜寝れない日も続いて仕事との両立も大変だったけど、頑張って育てて来たのに、大事に育てて来たのに……。
< 232 / 274 >

この作品をシェア

pagetop