名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 どのくらいの時間が立ったのだろうか? パタパタと足音が聞こえドアが開いた。

「夏希さん、どうしたんですか?」

「翔也さん……」
 朝倉先生は、肩で息をし、急いで駆けつけて来てくれたのがわかる。顔を見た瞬間に安堵の思いに再び涙があふれ出した。
 
「何があったんですか? 美優ちゃんは?」
 
「美優が……。将嗣のお母さんが、親権を……」
 しゃくりを上げながら上手く話せず、さっきあった事を要領が悪い状態で説明した。
 朝倉先生は、私が上手く話せなくても、急かすことなく、ゆっくりと頷きながら聞いてくれた。
 
「夏希さん、もしも園原さんが弁護士を立て来たならこちらも弁護士を立てて闘いましょう。大丈夫です」

 朝倉先生に ” 大丈夫 ”と言われると本当に大丈夫な気がする。

「でも、園原さんが夏希さんから美優ちゃんを奪う様な事をするとは思えないのですが……。それより、看護師さんを呼んで手当をしないと……」
 朝倉先生が眉根を寄せ、ベッドの枕元にある呼び出しのスイッチを押した。
 言われて初めて、点滴を差した右手は液漏れを起こし腫れあがり、縫合した左手は包帯に血が滲んでいるのを知った。
 病室に駆けつけた看護師さんにおっきな雷を落とされ、小さくなっているところにコンコンとノック音がする。
ドアが開くと美優を抱いた将嗣だった。
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