名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 「美優……」

 「どうしたの?」
 キョトンとしている将嗣に腹が立った。
 けど、看護師さんがまだ左手を消毒して包帯を巻き直している最中で怒られるといけないので、キッと睨んだ。

 看護師さんが退室するの見届けて私は将嗣に向かって言い放った。
「美優の親権は渡さないからね!」

「えっ?」
 将嗣は、寝耳に水と言った感じで酷く驚いている。
 
「園原さん、先程、園原さんのお母さんがこちらに見えたのはご存知ですか?」
 朝倉先生が訊ねると将嗣は、手を口にあて驚いていた。

「あのね、さっき、将嗣のお母さんが来て、私が美優の母親としてダメだから親権を取り上げるって言われたの」

 将嗣は、ギュッと目を瞑って頭を下げた。
「夏希、ごめん。絶対にそんなことしない。母親にもよく注意しておくから……本当に申し訳ない」
 
 美優を連れて、カーディーラーに行っていて、母親の行動を把握していなかったともう一度頭を下げられて、チョットだけ将嗣が可愛そうになる。
 将嗣に美優の親権争いの意思がないことを確認出来てホッとすると、鎮静剤が効いてきたのか眠気が来た。
 
「朝倉先生、ごめんなさい。用事があって帰る所だったのに呼び出してしまって、ありがとうございました。心強かったです。大丈夫そうなので、お仕事に行ってください」
 
「大丈夫だよ。夏希さん、無理しないで大事にしてください」
 朝倉先生の優しい瞳が私を見つめて、私はそのまま眠りに落ちて行った。
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