名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 次の日になってもホワホワとした気持ちのまま、病室で暇を持て余していた。
 左手を高く掲げて、薬指にあるピンクダイヤモンドの指輪を眺める。自然と口元が緩み一人でニヤニヤしてしまう。
 綺麗にキラキラ輝くダイヤモンド。「高そう~」と思わず口から言葉が出た。

 いかんせん、由緒正しき庶民なので、つい下世話な事を考えてしまう。
 だけど、考えてみれば、病院で保管は危ない。検査とかで指からはずなないといけない時もあるはず……。
 今日、美優の引き取りに朝倉先生が来るから、理由を言って預かってもらって、今は指に嵌めておくのが一番安全だな、と思った。

 コンコンとドアをノックする音が聞こえて「はーい」と返事をすると将嗣が美優を連れて入ってきた。

「おはよう」と声を掛け合い、美優を抱かせてもらう。
 赤ちゃん特有の甘い香りが、私を幸せにさせる。
「美優~!」と言って、親バカ丸出しで顔を”へにゃ”っと崩して、会えなかった時間を埋めるように抱きしめた。

「将嗣は、夜は寝れた? 子守で疲れたんじゃない?」
 
「実は、まま~、って、ひと泣きしないと夜寝ないんだよ」
 将嗣は、眉尻を下げて頬をポリポリと掻きながら言いにくそうに告白した。

「えっ? もしかして、ずっと?」

 
「やっぱり、ママが恋しいんだろなぁ。にわかパパじゃ、ダメみたい」
 
「美優~」もう一度、抱きしめて、頭を可愛い可愛いとナデナデしてると

「指輪……」と、将嗣が小さく呟いた。
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