名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

眉根を寄せて、私の手を見つめる将嗣になんて声を掛けたらいいのか……。
 
「将嗣」
 声を掛けるとビクッと跳ねたように私を見た。

「あいつと結婚するのか?」
 と私の左手に光る指輪に視線を落とす。

「ん、ごめん」
 将嗣の視線を追って俯いた私の視界が歪みだし、ポトリと涙が落ちた。

「ずるいよ。お前が泣くなんて……」

「ごめん」

 今までの将嗣との出来事が走馬灯のように駆け巡り、胸が詰まって短く返事をするのが精一杯だった。腕の中にいる美優だって将嗣がいなければ、この世にいなかったはずだ。
 自分の選択が、将嗣を悲しませることだってわかっていた。けれど、いざ目の当たりにして胸が詰まる。
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