名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 美優の事を大切に思ってくれている将嗣を、美優の人生から追い出すような事はしたく無い、今、言える全ての想いを込めて将嗣に言葉を紡ぐ。

「この先、美優が大人になっても、結婚してどんな苗字になっても、将嗣が美優のパパなのは、ずっと、ずっと変わらない。DNAが受け継がれていて、やめたくてもやめられない事実なんだから!」

「……ありがとう」
 将嗣の震える声が聞こえた。
 もう、将嗣の想いが溢れて心が痛くて涙が止まらない。
 泣きじゃくる私を将嗣も泣きながら抱きしめた。
 ただ、二人でボロボロと涙をこぼしながらギュッと抱き合った。 

「将嗣のこと……本当に好きだったんだよ」

「うん、わかっているよ。ごめんな。俺がいい加減だったから……。夏希が一番大変な時にそばにいられなくって……」

「……うん」

「もう遅いってわかっているけど、言わせて……。夏希、心から愛してる……」

 将嗣に ” 愛してる ” と言われても ” ごめん ” としか返せないのが切なくて、声に出せずに将嗣を見つめた。

「最後だから……」

 涙で濡れた瞳にキスを落とされた。
 将嗣の熱い唇が、涙を拭いながら頬にすべり、そして唇に重なった。
 将嗣の熱が唇から伝わる。胸が苦しくて、息が上手く出来ない。
 唇が離れると冷たい空気を感じた。
 ゆらゆらと揺れる瞳を見つめる。
 今、離れたばかりの唇から言葉が紡がれる。

「夏希、幸せになれ」
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