名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「歯科医院の跡継ぎに目が眩んだツケだね」

 キツイ言葉かも知れないが、私だって、いっぱい泣いたんだから……。

「そう、いずれ後を継ぐつもりで結婚したのが、そもそもの間違いだったよ。俺は、大事な事が分かっていなかった。夏希が凄く怒って、いっぱい泣きながら怒って、いなくなった……。その後、ぽっかりと気持ちに穴が空いてしまってから、やっと、気が付いた。自分にとって何が大事かって……」

 将嗣は眉根を寄せて、今にも泣きだすのをこらえているようにもみえた。
 色々な夫婦の形があるからその辺は何とも言えないけど……。
 私は、不倫は許せないし、自分がしたいと思った事は無かった。それに自分が不倫をしていたなんて想像もしていなかった。どれだけショックだったか……。

 不倫した理由は、分かったけど、それでも何かしこりが残った。

「手遅れかも知れないけど、やっと離婚したんだ」
 将嗣は、悲しそうにフッと微笑んだ。
  将嗣の酷く落ち込んだ様子を見て、この後、自分の話をして大丈夫なのか心配になる。
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