冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
 この日私のスマホには、一矢さんと母をはじめとした身内と凛たち家族に加えて、新たに阿久津さんの番号が追加された。

 メモリが増えた嬉しさに、つい何度か見つめてしまう。そこに他意はないとわかっていたからこそ当初は微笑ましく見ていた一矢さんだったが、日が経つにつれて次第に嫉妬するかのように絡みついてくるようになった。

「優、そんな無機物なんていいから、こっちにおいで」

 リビングのソファーでスマホを手にしていると、お風呂上がりに顔を出した一矢さんが声をかけてきた。特にアドレス帳を見ていたわけではないが、どうも一矢さんは疑っている。声音こそ穏やかだか、有無を言わさぬ物言いだ。

 テーブルにスマホを置いて彼に近づくと、途端にその大きな腕が私を捕まえて抱き込んでくる。まだ触れ合いに慣れない私は、それだけでドキドキしてしまう。

 そのまま素早く寝室へ連れていかれれば、言葉にされなくともこの後どうされるかわかってしまう。


 初めて肌を重ねて以来、一矢さんがいない日でも彼の寝室で寝起きするようになった。
 彼が早く帰宅できた夜は、こうやっていつもその腕の中に私を捉えてしまう。それが少しも嫌じゃなくて、とにかく幸せな気持ちにさせてくれる。


「俺は良吾どころか、優のスマホにまで嫉妬してしまいそうだ」

 行為の後、ポロリとこぼした一矢さんの言葉に思わず笑えば、小さく小突かれてしまう。

「ご、ごめんなさい」

 それでも肩を震わせてしまった私に、一矢さんがきまり悪そうな顔をした。

「優。明日、デートに出かけよう」

「デート?」

 突然の誘いに胸が弾む。もちろんデートなんて私には無縁だったから、どこへ連れていってもらえるのかとワクワクしてくる。

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