冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
 働き出して数カ月が過ぎた頃、突然京子がやって来たのをきっかけに安寧の場は奪われつつあった。

 それでもなんとか耐えて日々を過ごしているうちに、あっという間に成人を迎え、気づけば二十二歳になっていた。
 大学を卒業した凛は家をまったく継ぐつもりがないようで、そのまま離れた土地で就職を決めてしまった。

『優ちゃん、これからも両親を頼んだわよ』

 なんて彼女は冗談交じりに言っていたけれど、凛のご両親には返しきれないほどの恩があり、実母と同様に大切に思っていた。凛に頼まれるまでもなく、おふたりにずっと尽くしていこうと決めていた。

 それなのに、無情にも私の日常は突然終わりを迎えた。



『優。お前の名字を三橋に変更する』

 前触れもなくアパートにやって来た実父は、困惑する私と母を前にそう宣言した。止めようにも、手続きはすでに進められていた。

『お前には緒方総合病院の次期院長である、緒方一矢と結婚してもらう』

 なにがどうしてそうなるのかまったく理解できずに固まった私の横で、ひと足先に我に返った母が正信に詰め寄った。

『どういうことでしょうか? 優の縁談を勝手に決めるなんて、母親として許すわけにはいきません』

 毅然とした母の態度に、正信は顔色ひとつ変えずに続けた。

『本来は、陽にきた話だった。が、陽のやつは……まあ、それはいい。とにかく、陽は結婚できなくなった。かといって、これは利害が一致しての話だ。いまさら反古にもできない』

『だからって、なんで優が……』

< 13 / 150 >

この作品をシェア

pagetop