冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
 しばらくして体を離した一矢さんは、続きの話を聞かせてくれた。

「とりあえず、三橋社長には今回のことについて正式に抗議の電話を入れてある。結果として、結婚相手が入れ代わっていたと明言させる形になってしまったが、そこは問題ないだろう」

 父に、ばれてしまったのは私のせいだと言われるだろうかと、思わず体が強張った。すでに去った母になにかをされるとは思わないが、今後私や一矢さん、それから一矢さんの病院に不利益なことをしないかと不安だ。

 万が一、一矢さんと離婚するように言われたら? さらに、一矢さんが陽が再婚するような話になったら?
 
 私の不安を察知したのか、一矢さんが再び私の手を握ってくれた。

「優の想像はなんとなく予想がつくが、なにも心配はいらない。勝手に離婚をさせるのは不可能だし、いまさら三橋陽を担ぎ上げてもどうしようもないぐらい、あの人だってわかっているよ。そもそも、この結婚はある程度対等な立場で結ばれたものだ。その拮抗を向こうが崩したのだから、三橋家の方が分が悪い」

 一矢さんがそう言うのなら本当に大丈夫なのだろうと、小さく息を吐き出した。

「明日、三橋社長と会う予定でいる」

 これ以上あの人と話す必要があるのだろうかと、首を傾げる。

「俺たちに、三橋陽が二度と近づかないようにしてもらわないと、優も落ち着かないだろう?」

「……はい」

 再び陽がやってきたらと想像するだけで、不安で仕方がない。
 けれど、父は母と私を完全に見下している。それに京子や陽も、私たちを同じ人間だとは思っていなさそうだ。あの人たちに、そんな言い分を本当に聞いてもらえるのだろうか。

「大丈夫だ、優。明日、きちんと決着をつけてくる」

 その場に私がついていっても、なんの役にも立てないだろう。でも、自分にも関係した話である以上、もう人まかせにはしていられない。

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