冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
 簡単な朝食を終えると、そういえば昨夜ランドリースペースにほんの数日分の洗濯物が溜まっていたと思い出して、片付けてしまおうと決めた。
 医者として忙しそうな彼だが、洗濯は人まかせにせずに自身でやっているようだ。

 もしかしたら本命の女性がやってあげていたのかもと思うと罪悪感に襲われそうだが、なにか言われるようなら後で平身低頭謝ればいい。謝罪をするのは得意だから。
 それよりも、この状況でまさか自分の分だけ洗濯をする方が感じ悪い。そう自分を納得させると、すぐに行動に移した。

 洗い終わるまでの間に、掃除もやってしまおう。
 自分に与えられた部屋の掃除をするためにと、掃除道具がしまわれている場所は聞いてある。

 3LDKのこのマンションの部屋割りは、私に与えられた部屋以外のふた部屋は一矢さんの書斎と寝室になっており、そこには絶対に入らないように言われている。
 私の部屋は玄関入ってすぐにあり、もともと使っていなかったそうだ。そこに、私が来るのに合わせてベッドや机など、必要最低限のものを用意してくれてあった。まさかそんな気遣いがされるとは思っておらず、正直初めて足を踏み入れたときは驚いてしまった。もしかしたら、お布団があるだけかもと想像していたから。

 入室が許されているのは、自身に与えられた部屋以外はリビングやキッチン、水回りのみ。

 仕事は辞めざるを得なかったから、時間だけはいくらでもある。それに、家事はずっとしてきたからそれなりにできる。これが私の新たな仕事だと思って取り組もうと、沈むばかりだった気分を奮起した。

< 17 / 150 >

この作品をシェア

pagetop