冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
「それで、一矢は君を名前で呼んでるみたいだけど、優ちゃんは普段はなんて呼んでるの? さっきから一度も聞いてないんだけど」
時折私へ話を振ってくる阿久津さんだが、なんとも答えづらいものが多い。その最たるものがこの質問だった。
どうしても名前を呼ばなければいけないような場面など、避けるようにして暮らす中では一度だってなかった。そもそもここにはふたり以外誰もいないのだから、誰かと呼び分ける必要もないのだ。
ただ、結婚しておいて名前すら呼んでいないなんて、どうしたっておかしな話だ。それを第三者である、友人思いのこの人になんと言えばよいのか。
「優はシャイな性格のようだ。俺との生活に、まだそこまで慣れていないんだよ。込み入った話は遠慮してくれないか」
答えに窮していたら、一矢さんが助け舟を出してくれた。それに、阿久津さんが意外そうな、ともすると不満そうな、なんとも言えない表情をした。
「でも、二カ月ちかく一緒に暮らしてるんだろ?」
「そうだな。だが、俺が忙しすぎるせいで、そこまで一緒の時間を過ごせていない」
たしかに一矢さんは、いつも忙しくしている。それに、そもそも私が彼を避けるようにしているのだ。たとえ彼の仕事が落ち着いたとしても、そんな時間は持ちようがない。
「なんだか、仮面夫婦ってやつみたいだな」
「良吾、さすがに言いすぎだ」
それでも阿久津さんが言った言葉は、まさしく事実だ。私と一矢さんの間に夫婦らしさなんて皆無なのだから。
「ごめん」
ここはさすがに踏み込みすぎたと感じたのか、阿久津さんはためらいなく謝罪した。
時折私へ話を振ってくる阿久津さんだが、なんとも答えづらいものが多い。その最たるものがこの質問だった。
どうしても名前を呼ばなければいけないような場面など、避けるようにして暮らす中では一度だってなかった。そもそもここにはふたり以外誰もいないのだから、誰かと呼び分ける必要もないのだ。
ただ、結婚しておいて名前すら呼んでいないなんて、どうしたっておかしな話だ。それを第三者である、友人思いのこの人になんと言えばよいのか。
「優はシャイな性格のようだ。俺との生活に、まだそこまで慣れていないんだよ。込み入った話は遠慮してくれないか」
答えに窮していたら、一矢さんが助け舟を出してくれた。それに、阿久津さんが意外そうな、ともすると不満そうな、なんとも言えない表情をした。
「でも、二カ月ちかく一緒に暮らしてるんだろ?」
「そうだな。だが、俺が忙しすぎるせいで、そこまで一緒の時間を過ごせていない」
たしかに一矢さんは、いつも忙しくしている。それに、そもそも私が彼を避けるようにしているのだ。たとえ彼の仕事が落ち着いたとしても、そんな時間は持ちようがない。
「なんだか、仮面夫婦ってやつみたいだな」
「良吾、さすがに言いすぎだ」
それでも阿久津さんが言った言葉は、まさしく事実だ。私と一矢さんの間に夫婦らしさなんて皆無なのだから。
「ごめん」
ここはさすがに踏み込みすぎたと感じたのか、阿久津さんはためらいなく謝罪した。