若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「――え」
「マツリカの父親の死の真相を知って、やっぱり俺の会社が憎いというのなら、俺が償うよ」

 カナトのなかで、ひとつの決意が生まれていた。
 この先、彼女とともに鳥海の闇を暴くことになってその結果、彼女が自分や会社に更なる憎しみを抱くようになったとしても、そのすべてを包み込んで、死ぬまで愛し尽くそう、と。

「つぐなう、って。もう和解してるんですよ。母が慰謝料いただいているのに……」
「でも、納得がいかないから貴女はここにいるんだよね? それと同じで俺は貴女に対して誠実でありたいだけ。その結果、貴女が俺を憎むことになるとしても」
「カナト?」

 恋人役、なんて言葉でごまかしてはいるけれど、自分はもうマツリカを手放せないのだ。
 カナトはそれならば「償い」でも「復讐」でも構わないから彼女を手に入れようと画策している。
 身体だけ奪ったところで彼女をモノにできるとは思えない。
 それならば彼女がいま一番求めている情報を与えて、自分からはなれられないように、自分の意思でこの豪華客船クルーズが終わってからもカナトの傍にいたいと願わせなくてはならない。
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