若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「どうせ誰も見てないし、見えるような場所じゃない。ほら、海の向こうのタンカービューに見せつけてやろう? 俺たちはようやく身も心も結ばれたんだっ……て!」
「カナト、っ――……」

 ホテルの最上階の窓から見えるオーシャンビューを、はだかで抱き合った状態で見ている。かつて実父が働いていたタンカーが並ぶ、シンガポール海峡のライトに見守られているような錯覚に陥る。天国のバパは、マツリカが祝福された花嫁になったことをきっと、喜んでいるだろう。けれど、こんな風にカナトと抱き合っている姿を見られていると考えるのは恥ずかしすぎる――……!
 ガラスに映る倒錯的な光景を前に、マツリカは顔を真っ赤にする。

「泣きそうな顔しながら感じるマツリカ、かわいい」
「あぁー」
「早く孕ませたいのに、ずっと抱いていたくなるじゃないか」
「もぉ、お腹いっぱいっ!」

 まだ俺はこれからだよと笑いながらカナトはマツリカを甘く切なく手折っていく。
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