義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
 いくら、コツをつかんでも、これだけ集中できなきゃ、私に東大は無理だったろうな……。
 まだ、底に少しだけコーヒーの残っているカップを持って部屋を後にする。

 あっという間に夏休みになった。
「あ、武田先輩!お久しぶりです!」
 夏休みの間、異世界同好会の活動場所は学生の少ない食堂の片隅に移る。
 何のことはない、プレハブの部室は、クーラーをフルパワーにしても熱いからだ。
 暑いを通り越して熱い。
 で、夏休みも同好会の集まりがあるのは、8月のお盆にある同人誌即売会に向けての準備を進めるためだ。
 なんと、異世界同好会は毎年夏コミ冬コミにサークル参加しているらしい!スペースが取れればだけれど。
 「異世界系作品リスト」だの「異世界における魔法の種類分析」だのをまとめた同人誌を売るのだ。
 今年は、魔石についての考察という本を作るらしい。
 異世界小説に出てくる魔石、魔法石、それからモンスターから出てくる核など何かしら力を持った石というか塊について調べ上げてまとめるのだ。
 異世界同好会のメンバーは1年生が女子3名男子4名。2年生が女子4名男子4名。3年生は女子は痛ヒロインさん含め3名男子6名。4年生はもうほとんど参加しないけれど、女子1名男子は武田先輩をはじめ5名。
 合計30名。集まりには10~15人くらいの出席率だ。バイトのシフトなどで予定が合わない人とかもいるからね。
「ブイッ!」
 武田先輩がブイサインをしてテーブルに着く。
「内定出た!」
 ガタッと、腰を浮かす異世界同好会メンバー。
「おめでとうございます!」
 一斉に立ち上がり拍手っ!
「ありがとう!これで、同人誌づくりに心置きなく参加できる!」
 にこやかな顔の武田先輩。
 あ、そうだ!

■17

 内定出たらコーヒーをおごる約束したんだった!
 夏だし、ホットじゃなくてアイスでいいよね!
 皆が席に座っていろいろ作業を再開したので、自動販売機でカップのコーヒーを買う。
 えーっと、ミルクだけで砂糖なし。よし、覚えてた。
「武田先輩!内定おめでとうございます!」
 カップを武田先輩の後ろからテーブルの上に差し出す。
 振り返った武田先輩の目が驚きに見開かれていた。
「あ、覚えてないですか?前に内定もらったらおごりますって言ってた話……」
 武田先輩が頭を小さく横に振った。
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