義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
「いや、覚えてた……けど、結梨さんが覚えていてくれるとは思わなかった」
 武田先輩が笑った。
 ふおっ、イケメンのほほえみは、恋心がなくてもどっきりする。ああ、心臓に悪い。
「な、なんですか!私って、そんなに約束破りそうですか?」
 ドキドキを隠すように焦って言葉を発する。
「いや。約束っていうほどしっかり約束したわけじゃないし……。正直、就職活動がつらい時もあって。そんな時に思い出したんだよ。結梨さんにおごってもらえるように頑張るよって言ったことをね。それで、そうだ、結梨さんに内定出たというために頑張ろうって気持ちを立て直すことができたんだ」
 え……。
「結梨さんは忘れてるかもしれないけどって思いながらも、本当に助けられらんだ。だから、その……ありがとう」
 武田先輩が頭を下げた。
「そんな、私、別に大したことしてないですし……あ、そうだ、先輩、和樹が先輩の静電気が魔素の代わりにっていう話を聞いて、いろいろ実験してたんですよ」
「え?実験?どういう?」
「えーっと、風船こすって静電気をおこして、髪の毛が立つくらい体に静電気がたまってから、体内で静電気を感じ取ることができるかみたいな?」
 武田先輩がいつもの表情に戻った。
 はー、びっくりした。ちょっとした一言がそんなに感謝されるようなことになるなんて逆に焦るよ。
「へー、それはすごいね。で、どうだった?」
「2週間くらい続けてたんですけど、湿度が上がって静電気が起きにくくなって」
「梅雨で?」
「そうです。除湿ガンガンかけてたら両親に怒られて、実験の続きは冬にするそうです」
「あはは、そうか。湿度!もしかして魔素も湿度や気候によって影響を受けるようなものだったりするのかな?よく、魔力だまりみたいな魔素がたまる場所みたいな描写が出てくるけれど……気象条件と関連付けて書かれているものはあったかな?」
 おお、確かに新しい視点かもしれない!
 気象に影響される魔力か……。うん、面白そうね。
 実際はそんなことあるのかな?
 ああ、和樹の話も聞いてみたい。
「一度和樹君と話がしてみたいね」
 そうなんだ、武田先輩も和樹と話がしたいんだ。
 うん。
 武田先輩の話は面白いし、和樹もきっとうれしいよね?
 それとも、さすがに6つも年が離れていると話にくいかなぁ?

 ……っていうのは、杞憂でした。
 はい。
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