義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】
「日本のほうが何もかも進んでいて便利だって。もう、あんな不便な世界になんてとてもじゃないが住める気がしねぇよ」
 ほっと、つめていた息を吐きだす。
「そ、そっか。ここに……和樹はここがいいんだね!」
「あったりまえだろう。クッソ薄い味付けの飯とか無理だよ。カレーもないんだぜ?唐揚げは何とかなりそうだけど、カレーなんて絶対再現できねぇよ」
 カレー!
 ありがとうカレー!
 和樹を日本につなぎとめてくれて!
「風呂は?」
「あ?ああ、風呂な。しかし姉ちゃんの本ってさ、見てきたかのように書いてるのがあってびっくりした。まじ浄化魔法ってやつがあってさ。誰でも使えるわけじゃないけど、使える人が銭湯ならぬ、浄化魔法屋ってのやってるんだよ。だから風呂に入る代わりに浄化魔法ってのが常識。風呂なんて必要ないからなかったな」
 ふむふむ。
 銭湯みたいに、浄化魔法屋か。そうだよねー。そんな便利な魔法があれば当然そっちに発達するかぁ。
「まぁ、俺は風呂とかあってもなくてもどっちでもいいけど」
「和樹、烏の行水だもんねぇ。風呂あんまり好きじゃないもんね。私は、風呂がないのはきついなぁ……。あったかいお湯にとぷーんとつかるのすごく気持ちいいもん」
 和樹がぐっと口を引き締めた。
「姉ちゃんは長湯しすぎ」
「あ、ごめん。もしかして迷惑かけてた?今度からは和樹より後に入るようにするね。ごめん、ごめん」
 風呂嫌いな和樹は、母さんに何度も言われてもなかなか風呂に入らないから、私が先に入ること多かったんだよね。
「いや、別に、迷惑とかじゃねーしっ!」
 和樹がそっぽを向いた。
「でも、風呂嫌いには浄化魔法便利そうだね」
「風呂好きにだって、便利だよ。着てる服も浄化されるんだから、洗濯いらない」
「え?本当に?それは便利かも!クリーニング屋さんとかいらないんだよね。風呂屋で全部すんじゃう感じだ!」
 すごーい。
 和樹は何もかも異世界より日本のほうが進んでるとか言ってたけど、異世界も便利なところあるじゃん。
 っていうか、ファンタジーだなぁ。
 自分の前世が異世界の人間で、転生者だなんて言い出して……。
 本の読みすぎで、痛い人間になっちゃった、私のせいか?!と一瞬焦ったけれど。
 和樹は今中2だしねぇ。
 中二病だよね、これ。
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