極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「ただいま、旬太」

 保育室をのぞき込む繭に気がついた旬太がトテトテとつたない足取りでこちらに駆けてくる。旬太は歩き始めたのが遅いほうでまだあまり上手じゃないのだが、そこがまたかわいいところなのだ。

「まぁま!」

 ママの発音はずいぶんよくなった。どんどん言葉が増えている最中で、毎日新しい成長を見せてくれている。繭は旬太を抱きあげ、頬ずりする。温かく柔らかい頬の感触に、いとおしさが込みあげてくる。

(親馬鹿丸出しだけど、旬太が世界で一番かわいいなぁ)

 繭は目を細めて旬太の顔を見つめる。淡雪のように白くスベスベの肌にくっきりとした二重瞼。睫毛が長く、よく女の子と間違えられる。

(口元は私に似てるよね)

 小さいけれど、ふっくらとした厚みのある唇は繭にそっくりだ。でも全体の印象は繭よりも……彼に似ている。そっくりというほどでもないが、彼の面影がたしかにある。

(今もアメリカで活躍してるのかなぁ)

 繭は彼、旬太の父親である樹のことを懐かしく思い出す。
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