極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 繭は足首に手をやりながらペロリと舌を出した。もしかしたら樹と話すチャンスが巡ってくるかもと期待してオシャレをしてきたが、彼の視界に入ることすらできなかった。シビアな現実に繭は苦笑を漏らす。

「それじゃ、私はこれで」
「気をつけて帰ってね~」

 二次会参加組の美智子たちに手を振って繭はひと足先に会場を出た。エレベーターで一階におりると、テナントとして入居しているコーヒーショップに目を留める。あれこれ食べすぎた口をさっぱりさせたいと思ったのだ。

「アイスコーヒーでも買って帰ろうっと」

 繭はそうつぶやいて、閉店間際のコーヒーショップに駆け込んだ。店内は意外と混雑していて、繭は二、三人が並んでいる列の最後尾についた。テイクアウトのアイスコーヒーを受け取ってくるりと踵を返すと、真後ろに意外すぎる人物が立っていた。

「あっ」

 驚きのあまり繭は声を出してしまう。なぜなら、そこにいたのが樹だったからだ。だが、彼のほうはきょとんとした顔をしている。

(そっか、高坂先生はきっと私の顔を知らないのよね)
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