極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 樹の美貌と輝かしい経歴に手も足も出ないことを悟った卓也はすごすごと逃げ帰っていき、繭とぬれたスーツ姿の樹が残された。
 繭は頭が自身の膝につきそうなほど深々と頭をさげて謝罪する。

「ご、ごめんなさい! そのスーツじゃ二次会には行けないですよね」

 今夜の主役は彼なのに……繭は焦った。ホテルのなかにいくつか洋服を扱うテナントは入っているが、ちょうどどこも店じまいをしている時間だ。

「サイズを教えていただければ、私が今からでも買ってきます!」

 ホテルの外に出れば着替えを調達できるかもと思い繭は樹に提案したが、彼はゆっくりと首を横に振る。

「繁華街ならともかくこの辺りはオフィス街だから、もう店は閉まってるよ。それに、最初から二次会には不参加と伝えてあるから問題ない」

 樹は怒っている様子もなく落ち着いていた。冷静な口調で続ける。

「ホテルの人間に頼めば、シャツのほうはクリーニングしてくれるだろ。ちょっと疲れたし、今夜はこのホテルに部屋を取ることにする」
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