極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 繭はうなずく。決して警察の怠慢というわけではなく、ストーカーは民事トラブルとの区別がつけづらいところがありそこが難しい部分なのだ。最近はかなり改善されてきているが、『一度尾行されただけ』という現状で警察がどこまで対応してくれるかは不明だった。

(でも、自宅を特定されているのは怖いな)

「旦那は? 何時頃に帰ってくる?」
「え? だんな?」

 オウム返しにつぶやいてから、繭は『しまった!』と自覚する。樹は繭を既婚者だと思っているのだ。こういう事態ならまずは夫に連絡を取るのが当然だろう。案の定、樹は狼狽する繭の顔をいぶかしげにのぞき込んでくる。

(どうしよう。どうごまかしたらいいの?)

 探るような樹の視線が痛い。

「連絡つかないのか?」
「り、離婚したんです!」

 繭は膝の上でこぶしをぎゅっと握り締めて、吐き出すように言う。この嘘が一番リスクが少ないと判断したのだ。いもしない夫の存在を信じ込ませるのは、きっと至難のわざだ。嘘をつく負い目のせいか、やや早口に繭は言葉をつなぐ。
< 75 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop