極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
(まるで、私があの夜を思い出すことをわかっていて言ったみたい)

 小悪魔な彼を、繭は恨めしげに見つめた。

 こんなふうに、樹のちょっとした台詞や仕草に翻弄されることはあっても、彼との生活自体には驚くほどすんなりと繭は、そして旬太も、順応していた。
 ネクタイを緩めシャツの一番上のボタンを外した彼が、霧のような細い雨にけぶる庭の紫陽花を眺めているのにも、もう違和感はない。

「今年は長梅雨ですね」
「そうだな」

 彼の横でしばらく風情ある景色を楽しんでから、繭は台所へ足を向ける。

「今夜のメインはサバにしようかと思うんですが、先生は味噌煮と塩焼きならどっちがお好みですか?」
「味噌煮!」

 間髪入れずに返ってくる答えに繭はくすりと笑って言う。

「旬太もお魚は煮たのが一番好きなんですよ。ね、旬太」

 居間で車のおもちゃを走らせている旬太を見守りながら繭は言う。やっぱり父子だなと思ったことは、樹にも旬太にも内緒だ。樹は立ちあがると、キッチンまで歩いてきて繭の隣に立つ。
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