彼と私のお伽噺



 翌朝。ひとり分のお弁当を作っていると、キッチンに立つ私の背後に回った昴生さんが不審げに訊ねてきた。


「どうして今日は弁当がひとつなんだ?」

「今日は、外でランチを食べる予定なんです」

「誰と?」

「え、っと……」

 正直に戸崎部長に誘われて……、と答えようと思ったけれど、昴生さまの表情から不穏な空気が感じられて口ごもる。

 昴生さんがこれまで私の交友関係に厳しかったのは、私がまだ学生だったからだと思っていたし、一緒に遊ぶメンバーの中に男の子がいると異様に不機嫌になるのがいつも不思議だったけど……。

 あれはもしかして、他の男の子と一緒にいた私にヤキモチ焼いてくれてたんじゃ……。ふと、そんな都合の良い考えに思い当って、胸の奥がキュンとした。

 もしそうだとしたら、嬉しいんだけど。

 ニヤリと口元を緩めると、眉間を寄せた昴生さんに上からジッと睨まれた。


「で? 誰とメシ食いに行くんだよ」

「え、っと……、総務部の先輩たちとです」

「……たち、って?」

「え、っと……、山里さんとか、戸崎部長とか……」
「戸崎?」

 昴生さんが戸崎部長の名前に反応して、びくりと眉を動かす。

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